ebisu_ryoの日記

立体音響、舞台、Notion、備忘録などテーマに一貫性なく書き散らかします。

『君たちはどう生きるか』感想メモ -天才の頭の中と走馬灯-

君たちはどう生きるか

公開2日目に新宿ピカデリーで友人と二人で鑑賞してきた。前日にチケットをとったがほぼ満席で前から4列目で何とか並びの席を買えた。

 

ジブリの熱狂的ファンというほどではないが全作何度か見ていて『風の谷のナウシカ』の漫画版をはじめ書籍を何冊か持っているくらいには好きだ。

 

なので宣伝があろうがなかろうが宮崎駿さんの新作なら絶対に観に行く。最近はどうやってもいろんな方面から見ようとする作品の情報が入ってきてしまうので一切それがない状態で作品を楽しめるのはもはや贅沢ですらある体験だった。

(事前の宣伝を一切しないという手法は宮崎駿さんなみの人気があるから選択できる手法なので、仕事上PR宣伝をやることがある立場としてはうらやましく思ったりするがそれは別の話)

 

映画としてはあれこれ言われやすいような内容だなと思った、と同時に圧倒的に好きだった。2時間弱の間、天才の頭の中と走馬灯の中に入り込んだような不思議な体験だった。

 

説明不足と言われればそれまで、でも世界はいつも説明不足だし、それとは関係なくそこにあるものだろ、と変な納得感を覚えながら目の前の出来事を飲み込んでいった。

 

どうしようもなく理不尽で、正しさと正しくなさがごちゃ混ぜになった状況で、それでも自分はこうする、と突き進んでいく主人公の姿は観ていて眩しかった。

劇中で起きていることは滅茶苦茶で支離滅裂で自分勝手で、でも観終わったときに「世界は美しい」と圧倒的に肯定してくれている気分になる、「生きてみよう」としみじみと思える、少なくとも自分はそう思えた、不思議な体験でした。

『空の悪魔』空間音響ラジオドラマができるまで

この記事は演劇と最新の空間音響技術”Re:Sense(リセンス)”の組み合わせにより誕生した前代未聞の空間音響ラジオドラマ『空の悪魔』ができるまでについての記事です。

 

まずはダイジェスト版を聴いてみてください。(イヤホン・またはヘッドホンでお楽しみください)

youtu.be

 

章立て

『空の悪魔』『岸田國士戦争劇集』とは

『空の悪魔』あらすじ

東京、山手の時計商・酒井欽蔵は、空襲が来るとされる夜、灯火管制の中でも手仕事を続けている。ふてくれたように寝ていた息子・鉄蔵は父親と「戦争の意義」に関する口論を交わした後、毒ガス班として出動していくが……。
引用: DULL-COLORED POP公式WEBより

 

『空の悪魔』は「もし東京に空襲が来たら」という空想に基づき、劇作家・岸田國士が1933年に書いたラジオドラマです。実際に東京に空襲が来る10年も前に書かれていたのです。

 

ラジオドラマ版『空の悪魔』は劇団であるDULL-COLORED POPの第25回本公演『岸田國士戦争劇集』の一連のプロジェクトの1作品として企画されていました。

 

DULL-COLORED POP第25回本公演『岸田國士戦争劇集』とは

”日本の近代劇に多大な影響を与え、今も「演劇界の芥川賞」と呼ばれる戯曲賞にその名を刻む劇作家・岸田國士
戯曲や評論を数多く執筆し、文学座の創設にも携わるなど演劇界に大きな影響を及ぼしました。しかし彼が戦争中、1940年から1942年にかけて大政翼賛会の初代文化部長に就任し、終戦後には戦争指導者の一人として公職追放の処分を受けていたことはあまり知られていません。

 

岸田國士は戦争をどのように見ていたのか? 岸田の「戦争劇」を並べて上演することで、岸田と当時の日本人が戦争をどのように見ていたのか浮かび上がらせます。”
引用: DULL-COLORED POP公式WEBより

 

岸田が書いた「戦争劇」をそれぞれどのように発表すべきか様々な検討がなされていた中で、ラジオドラマである『空の悪魔』に空間音響技術”Re:Sense”を使う案が持ち込まれました。



空間音響技術”Re:Sense(リセンス)”とは

クレプシードラ社による独自の空間音響技術が”Re:Sense(リセンス)”です。高価な機器や時間をかけずにその場の空気感を収録し、どんなイヤホン・ヘッドホンでも再生できる技術です。

従来の立体音響技術よりも格段に高いクオリティを持ち、方向感だけでなく距離感・質感まで再現できます。

 

岸田が空想し、そして現実となった東京が空襲されるという物語『空の悪魔』と”Re:Sense(リセンス)”の出会いにより前代未聞のラジオドラマが動き始めました。

収録に使うマイク装着中

 

 

 

『空の悪魔』創作過程

『空の悪魔』には総勢31名の俳優が出演しており、劇場で上演される『動員挿話』『かへらじと』『戦争指導者』の稽古の合間を塗って収録が行われました。



ラジオドラマでありながら方向感・距離感などの演出を取り入れるために実寸のセットが組まれ、俳優陣は衣擦れの音まで再現するため衣装付き、『岸田國士戦争劇集』本編でも演出を務める谷賢一さんの細部に渡る演出が綿密に組まれ、台本をめくる音を入れないため台詞も暗記で収録に臨んでいます(ラジオドラマなのに!)。

 

30分の本編のため収録は丸々2日に及び、舞台音響家の佐藤こうじ(Sugar Sound)さんによる約2週間の編集を経て『空の悪魔』は誕生しました。

 

約90年前に空想された東京空襲の物語が最新の空間音響技術と演劇のパワーが掛け合わされて制作されたこの作品、是非ご購入の上、お手持ちのイヤホン・ヘッドホンでお楽しみください。

空の悪魔_収録風景


ご購入・視聴はこちらから

www.dcpop.org

 

 

作品情報

ラジオドラマ『空の悪魔』

作:岸田國士、演出:谷賢一

音響・編集:佐藤こうじ(Sugar Sound)、空間音響技術 Clepseadra(クレプシードラ)、製作:DULL-COLORED POP

出演
鉄蔵:阿久津京介、欽蔵:東谷英人、美代:倉橋愛実(以上DULL-COLORED POP)、いく:石田迪子、加代:原田理央(柿喰う客)、庄市:荒川大三朗

石井泉、石川湖太朗(サルメカンパニー)、伊藤麗、越前屋由隆、小野耀大、小幡貴史、勝沼優、刈屋佑梨、函波窓(ヒノカサの虜)、國崎史人、齊藤由佳、椎名一浩、田中リュウ、服部大成、ふじおあつや、古河耕史、間瀬英正、松戸デイモン、溝渕俊介、宮部大駿、渡辺菜花、クラウドファンディング「ガヤで出演できますコース」の皆様

resense.site

 

clepseadra.com